「亀戸」の地名由来と「亀ヶ井」

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嘉永四年(1851)刊行・近吾堂板「本所・猿江・亀戸村辺り絵図」(部分)

「亀戸」という地名を「かめいど」と読むのは、はじめての人だと難しいかもしれません。この地名の由来には諸説ありますが、基本的なものは下記の説です。
1)昔はこのあたりは海に浮かぶ島で、その島の形が亀に似ていたことに由来するというものです。すなわち、この地域は島で形が亀に似ていたので「亀島」あるいは「亀津島」といい、のちに陸続きになったので「亀村」に転じ、その後、亀村から亀居処(亀のいる所)に転じ、さらに「亀戸」になったというものです。
2)もう一つは、昔、「亀ケ井」という古井戸があり、それに由来するというものです。その亀ケ井は、亀形の井桁がある井戸、あるいは、亀の背の甲羅のような形の所から水が湧き出る井戸、とか言われます。
その「亀ヶ井」が「亀井」になり、「亀井のある処」で「亀戸」となったという説です。
3)基本的には、「亀島」と「亀ヶ井」が根拠になっています。そうすると、その2つが合体した由来説もあります。
「昔、この地に亀ヶ井という井戸があった。また、昔はこのあたりは海で、亀の甲羅のような砂州があり、それを<亀島>と読んでいた。それが、後に陸続きになり<亀村>と呼ぶようになった。それが<亀ヶ井>と混同され、<亀井戸>となり<亀戸>となった」という説です。(『お江戸の地名の意外な由来』PHP研究所 中江克己 より )
「亀ヶ井」には遺構があります。
亀戸の地名のゆかりの「亀ケ井」を訪ねてみました。

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亀戸天神社の 亀と「亀ヶ井」

「亀戸天満宮(現亀戸天神社)の社地内に妙義社があり、ここに亀甲形に井桁をくんだ井戸があり、水が湧き出ているので亀井戸と言った」
亀戸天神社の隅(御嶽神社の裏)に、亀の形の石と井桁のモニュメントがあります。亀井戸跡の碑も建っています。建立年代、建立者等は不詳です。

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亀戸香取神社の復元された「亀ヶ井」

そして、亀戸天神社に近い「亀戸香取神社」の境内には「亀が井」と呼ばれる井戸が復元されています。
こちらの説明によると、かつてこの地は臥龍梅庭内に入り、「亀ケ井」と呼ばれる井戸があったとしています。

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亀戸香取神社の「亀ヶ井」由来の碑

亀戸という地名は、この「亀ケ井」から来ているという説があることで、平成15年(2003)に「亀ケ井」をこの境内に復元をしたということです。
なお、ここの井戸の水は、汲み上げの井戸水で自然水だそうです。
「残念ながら飲用には適していませんが、引水・表流しておらず、また貯水もされていない湧出したばかりの水を手にすることができます」

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亀戸香取神社の大黒様と恵比寿様

それで、拝殿右手に大黒様と恵比寿様の尊像が立ち、その尊像に柄杓で亀ヶ井戸から汲みあげた水を、例えば身体で具合の悪い所にかけるなどして参詣します。この大黒様と恵比寿様の尊像は、亀戸七福神めぐりで、亀戸香取神社がこの2尊を祀っていることから建てられています。
もともと、亀戸七福神は、亀戸香取神社の大国様・恵比寿様を中心として、周囲の寺社に残りの福神を配して成立したようです。