童謡『たきび』の歌発祥の地を歩く

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西武新宿線新井薬師前駅の南、上高田3丁目にひときわ目立つ竹の垣根を持つお屋敷があります。
♪かきねの かきねの まがりかど たきびだ たきびだ おちばたき 
その垣根の場所が、童謡『たきび』の歌発祥の地です。
『たきび』は、作詞:巽聖歌、作曲:渡辺茂による日本の童謡で、昭和16年(1941)にNHKのラジオ番組「幼児の時間」で放送されました。
そして、昭和24年(1949)に、NHKのラジオ番組「うたのおばさん」で松田トシ安西愛子が歌い、
そこから全国の幼稚園や保育園、小学校に広まりました。
巽 聖歌(たつみ せいか/1905-1973)は、本名:野村 七蔵(しちぞう)と言い、岩手県の出身です。

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この詞が作られた頃、巽 聖歌はこの近くに家を借りて住んでいました。このあたりをよく散歩していたそうです。
散歩しながら作詞されたのが、この『たきび』です。
当時の面影を残す長い垣根とお屋敷。何か懐かしさを感じます。見事な欅の大木もあります。

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巽 聖歌が散歩していた当時の垣根は竹ではなく山茶花やお茶などの生垣だったようです。
♪さざんか さざんか さいたみち たきびだ たきびだ おちばたき 
歌碑が少し奥まった所にあり、次のような碑文が記されています。

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<中野区上高田3丁目 童謡『たきび』歌碑>

 

考えてみると、焚き火は多くの災難にあい、姿を消しています。
太平洋戦争当時は「焚き火は敵機の攻撃目標になる」、「落ち葉は風呂を炊くための貴重な資源だからもったいない」といった批判があり、
当時NHKの「歌のおけいこ」で「たきび」は放送されていたのですが、中止されたそうです。
戦後は、小学校の教科書にも掲載されましたが、
消防庁から「町角の焚き火は危険」「防火教育にさしつかえないように考えて欲しい」の要望があり
教科書に掲載する際には挿絵に焚き火と子どもだけではなく、大人と火消し用の水が入ったバケツが描かれるようになったとのことです。
そうして焚き火は、現在、少なくても、東京の街ではできないですね。焚き火の風景を見たことがありません。
そのうち「焚き火って何?」になるかもしれません。
また、この見事な垣根の整備も大変だと思います。この暖かな雰囲気はいつまで保たれるのでしょうか。
それに、そもそも「童謡」は歌い続けられるのしょうか。