亀戸天神社の「おいぬさま」

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亀戸天神社にある「おいぬさま」

亀戸天神社御嶽神社の裏、亀ヶ井の碑があるところの右に、塩にまみれた「おいぬさま」を祀る小祠があります。案内はないですが、この「おいぬさま」に塩をかけて祈願すると祈願成就するということです。
塩をつけるのは、お地蔵さんによくあります。「塩地蔵」です。お地蔵さんの場合は、自分の痛いところをお地蔵さんの場所で、塩を付けたりします。また、お地蔵さんに供えられている塩をひとつまみいただいて、痛いところに塗って清め、痛みが取れたら、塩を倍返して供えたりします。また、治したい箇所を塩で清めるのではなく、お地蔵さんに紙つぶてのように塩を投げつけて、痛みは地蔵様が代わって病んでもらうとか、いろいろな対応があります。
この「おいぬさま」はどうなのかなと思います。人間の姿ではないので、痛い箇所に塗るのは難しいかもしれません。おそらく塩をお供えして「病気治癒」「商売繁盛」などをお祈りするのでしょう。
とにかく「塩おいぬさま」は珍しいです。
由緒については、はっきりしませんが、亀戸天神社境内摂末社「妙義社(御嶽社)」にあった狛犬が、大正12年(1923)の関東大震災か昭和20年(1945)の空襲で震災とか戦災にあって破損し、片方だけになって、境内の隅に置かれていて、それがいつのまにか「おいぬさま」信仰に結びついたのではないかと想像されています。

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天保9年(1838)発行の『東都歳時記』「卯の日・亀戸妙義参り」の妙義社(御嶽社)挿絵です。鳥居から石段を登ったところに、狛犬が描かれています。この狛犬が現在の「おいぬさま」なのかもしれません。